文化的価値の創造にかかる共同研究が一助となり敦賀の「おぼろ昆布」製造技術が文化財登録へ【人間・科学・宗教総合研究センター】
2025.01.31
福井県敦賀市の「おぼろ昆布」製造技術が国の無形民族文化財として新登録
“うまみ”はすでに世界共通言語になりつつあるほど、第5の味覚として浸透しています。この“うまみ”成分のひとつである、グルタミン酸を豊富に含む昆布は、北前船の歴史から福井県敦賀市で手すき加工の技術が発達。現在では敦賀市の「おぼろ昆布」が国内シェアの大半を占めるとされます。
2025年1月24日に開催された国の文化審議会において、敦賀市特産の「おぼろ昆布」を作る際に、職人が専用の刃物で巧みに昆布を薄く削る伝統的な製造技術が評価され、国の無形民俗文化財(※1)として新たに登録するよう文部科学大臣に答申しました。答申どおり登録されれば福井県では初、全国では8件の登録数になります。
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龍谷大学では、2022年6月に敦賀市から「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業にかかる共同研究をLORC(地域公共人材・政策開発リサーチセンター)が受託し、政策学部・石倉 研准教授(地域経済学)とゼミ生らが敦賀市内のおぼろ昆布製造現場の視察や聞き取り調査などを行ってきました。龍谷大学内においても、学生企画として、生協食堂麺コーナーでのおぼろ昆布無料トッピング提供を2回実施する等、広報活動にも取り組んできました。また、調査研究の成果を2024年3月に報告書『敦賀のおぼろ昆布加工技術調査報告』(敦賀市教育委員会発行)として公表したことも、今回の文化財登録の後押しとなったようです。
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「おぼろ昆布」は、醸造酢に漬けて柔らかくした昆布の両端を切り落とし、専用の包丁で透けるほど薄く削って作る。0.01〜0.05ミリという薄さに仕上げるため、職人の熟練の技が必要となる。昆布の表皮からすきとったものは「むき込みおぼろ昆布」、芯に近いところは雪のように白い「太白(たいはく)おぼろ昆布」と呼ばれる。
類似の昆布加工品として「とろろ昆布」があるが、とろろ昆布は主に機械削りで作られる。
今回の敦賀の「おぼろ昆布」製造技術の無形民族文化財登録に際して、石倉 研准教授(本学政策学部)のコメントを紹介します。
敦賀市内では「登録決定記念イベント 再発見!敦賀のおぼろ昆布」として、パネル展示やミニシンポジウムが開催されます。2025年3月8日(土)のミニシンポジウムには、石倉准教授が学生と共に登壇する予定です。
【→イベント詳細(敦賀市HP)】
【補註】
(※1)無形民俗文化財:
登録無形民俗文化財は、日本の衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術などの無形の民俗文化財のうち、保存及び活用のための措置が特に必要とされるものとして文化財登録原簿に登録されたもの。2021年6月14日に文化財保護法の一部が改正され、登録無形文化財制度とともに創設された。これまでに「讃岐の醤油醸造技術」や「能登のいしる・いしり製造技術」、「近江のなれずし製造技術」などが登録されている。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/minzoku/